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論点権利関係宅建業法

手付解除はいつまでできる?放棄・倍額の提供と履行着手

解約手付による解除では、買主は手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供します。民法の原則では、相手方が履行に着手した後はこの方法による解除ができません。

住宅の鍵と売買契約の確認に使う書類
この記事の目次 9項目
  1. 契約違反がなくても解除できる制度
  2. 売主は、受け取った手付の2倍を現実に提供する
  3. 基準となるのは、相手方の履行着手
  4. 代金の一部支払と、資金の準備を区別する
  5. 売主が宅建業者の場合に加わる保護
  6. 他の解除・違約金と混ぜない
  7. 出典・参照資料
  8. 次に学ぶ
  9. 関連記事

契約違反がなくても解除できる制度

売買の契約時に手付が授受された場合、民法557条は、買主が手付を放棄し、売主がその倍額を現実に提供することで解除できる扱いを定めています。相手が契約に違反したから解除するという話ではありません。自分の都合で契約から離れたい場合でも、所定の負担をして解除する仕組みです。

例えば、代金3,000万円の売買で買主Bが売主Aへ100万円の手付を渡した後、Bが別の物件を買いたくなったとします。解約手付のルールが使える段階なら、Bは既に渡した100万円を返してもらわずに解除します。Aへさらに100万円を追加で払うという意味ではありません。

売主は、受け取った手付の2倍を現実に提供する

Aが手付解除をする場合は、200万円を現実に提供します。この200万円には、受け取っていた100万円の返還分も含まれます。「手付を返したうえで、別に200万円を加えて合計300万円」とはなりません。

反対に、売主が口頭で「いつか倍額を払う」と伝えただけでは、倍額の現実の提供と同じには扱えません。買主の手付放棄と売主の倍額提供は、同じ金額の追加支払を双方へ要求する制度ではないため、誰が解除するのかを最初に確認してください。

基準となるのは、相手方の履行着手

民法のただし書は、相手方が契約の履行に着手した後を制限しています。買主が解除しようとするなら売主の履行着手、売主が解除しようとするなら買主の履行着手を見ます。自分が履行に着手したという事実だけで、自分による手付解除が直ちに禁止されるわけではありません。

履行着手に当たるかは、契約内容に即して、客観的に外部から認識できるような履行行為の一部や、履行のために欠かせない前提行為等かを考える問題です。単なる心の中の準備や、自分の都合だけで行った準備を、何でも着手と呼ぶわけではありません。個々の行為は事情により判断が分かれます。

代金の一部支払と、資金の準備を区別する

買主が契約に基づいて中間金を現実に支払う場面と、自分の預金を別の口座へ移すだけの場面は同じではありません。前者は相手方に対する契約履行の一部と評価されることが問題となりますが、後者は自分の内部で資金を用意している段階です。

「支払うための準備をした」「引渡しに備えた」といった抽象的な表現だけで答えず、具体的に何をしたのかを読みます。設問に特別の合意や期限があるときは、民法の原則とその合意の効力を切り分けて検討する必要があります。

売主が宅建業者の場合に加わる保護

売主が宅建業者、買主が宅建業者でない場合には、宅建業法39条も確認します。受領できる手付は代金の20%までであり、受け取った手付はどのような性質のものでも同条の手付解除の扱いを受けます。買主に不利な特約は無効となります。

例えば、同条件の売買で「手付を受け取ったが買主の解除は一切認めない」という定めを置いても、同条の保護を契約文言だけで外すことはできません。ただし、宅建業者同士なら適用除外があるため、単に業者が登場するというだけで同条を当てはめないでください。

他の解除・違約金と混ぜない

解除を求める理由

主に検討するもの

解約手付によって契約から離れたい

手付放棄・倍額提供と相手方の履行着手

相手が代金を払わない

債務不履行と催告解除等の要件

契約の内容が違う物を渡された

契約不適合に対する救済と解除の要件

手付解除できるか、損害賠償が生じるか、違約金条項がどう働くかは、解除の根拠と契約内容によって検討が変わります。手付を受け取っているという一事だけで、すべての解除を手付の問題へまとめないことが大切です。

出典・参照資料

  1. 民法(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28
  2. 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/22

次に学ぶ

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