特定価格は、市場性を持つ不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる条件を満たさないことにより、その市場価値から乖離する場合に求める価格です。依頼者の希望する高い価格や、特定の人が付けた価格という意味ではありません。
正常価格と異なる条件に着目する
正常価格は、合理的な条件を満たす市場で形成される市場価値を表します。特定価格では、法令等による評価目的と、その目的に対応する条件が出発点になります。どの条件が正常価格の前提と異なり、価格へどのように影響するのかを明らかにする必要があります。
不動産鑑定評価基準には、民事再生法に基づく早期売却を前提とする場合や、会社更生法・民事再生法に基づき事業の継続を前提とする場合等が例示されています。名称だけで判定せず、依頼目的と具体的な前提を読みます。
証券化対象不動産で確認する点
基準では、証券化対象不動産の評価目的の下で投資家へ示す投資採算価値を表す価格を求める場合も、特定価格の例に挙げられています。証券化対象であるという一語だけで、求める価格や前提を省略してよいわけではありません。
評価の目的、提出先、想定する投資や処分の条件を確認し、該当する基準の各論との関係を整理します。通常の市場価値を求める説明と混在させず、どの経済価値を求めた結論なのかが読み取れるようにします。
限定価格・特殊価格との比較
種類 | 主な着眼点 | 混同しない点 |
|---|---|---|
限定価格 | 併合・分割等による市場の相対的な限定 | 隣地の併合は直ちに特定価格とはしない |
特定価格 | 社会的要請を背景とする目的と正常価格と異なる条件 | 依頼者の好みだけでは決まらない |
特殊価格 | 一般的に市場性を持たない不動産 | 特定価格は市場性を持つ不動産が対象 |
隣地を取得して一体利用すると価値が変わるという話と、法令等に基づく早期売却の条件は、価格の種類を判断する根拠が異なります。どちらも通常と違うという理由だけで同じ名称にはまとめません。
条件と結論をセットで示す
早期売却の条件を置く例では、処分までの期間や市場での売却の可能性を検討する必要があります。「早く売るので正常価格から一律何%引く」と固定した率を当てはめるだけでは、その条件が価格へ与える影響を説明できません。
また、特定価格という名称を付ければ、依頼者の希望額を採用できるものでもありません。資料の収集、市場分析、手法の適用、結論の理由づけは必要です。どの条件を設定し、どの資料を根拠に経済価値を把握したのかを明示します。
確認問題
問1:依頼者が希望する購入予算を指定したら、その金額は特定価格になりますか。
いいえ。特定価格は、依頼者の希望額を意味しません。社会的要請を背景とする評価目的と、正常価格の前提と異なる条件の関係を確認します。
問2:一般的に市場性を持たない文化財の保存を主眼とする評価は、特定価格の説明と同じですか。
同じではありません。そのような不動産の利用現況等を前提とする評価では、特殊価格の概念を検討します。
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出典・参照資料
- 不動産鑑定評価基準(国土交通省)確認日 2026/10/23
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