契約の当事者と、手続きを手伝う人を分ける
売主S、買主B、不動産会社Aがいるとします。売買契約により所有権を移す義務を負うのは誰か、代金を支払う義務を負うのは誰かを先に確認します。Aが書類を準備し交渉を進めていても、それだけでA自身が売主になったわけではありません。
媒介では、AがSとBの契約成立を取り持ちます。物件の紹介、条件の調整、日程の調整等をしても、媒介を依頼されたという事実だけから、AがSの代わりに売買契約を締結できるわけではありません。契約締結についての最終的な意思表示と、そのための権限を分けて考えます。
代理人は、本人のために権限を行使する
SがAへ売却の代理権を与え、Aが権限の範囲内でSのためにすることを示してBと契約した場合、原則としてその効果は直接Sへ帰属します。代理人Aが一度買主となって、次にBへ転売するという二段階の売買ではありません。
代理を検討するときは、代理権の有無、権限の範囲、本人のために行うことの表示を確認します。価格を2,000万円以上に限る代理権なのに1,800万円で契約した等の場合には、単に「代理人」と名乗ったから有効と結論付けず、権限外の行為等の問題を検討します。
一つの場面で比べる
場面 | 媒介の場合 | 代理の場合 |
|---|---|---|
購入希望者を紹介する | 契約成立に向けて取り持つ | 代理業務の準備として行うこともある |
価格条件を調整する | 当事者の合意を支援する | 与えられた権限の範囲を確認する |
最終的に契約する | 媒介依頼だけでは本人に代わり締結できない | 権限内の代理行為の効果が本人に帰属する |
不動産会社の立場 | 原則として売買の当事者ではない | 代理人であり、本人自身が当事者となる |
同じ「条件交渉」という作業でも、媒介でも代理でも行うことがあります。作業名だけで区別するのではなく、契約を締結する権限を誰が持つかを見てください。
委任状の名称だけで、権限の範囲は決まらない
例えば、SがAに「購入希望者との連絡調整を任せる」と伝えていたとしても、売却価格や売買契約締結まで任せたかは別に確認が必要です。書面があれば題名だけでなく、対象物件、行為、価格条件、期間等の記載を読みます。
Aが権限を持たないのにSの代理人として契約した場合には、無権代理や表見代理等の要件を検討します。取引相手がAを信頼していたという事情一つだけで、当然にSへ効果を帰属させることはできません。民法上の成立・効果と、宅建業法上の業務規制をそれぞれ確認します。
広告の「売主・代理・媒介」を読み分ける
宅建業者は、広告や注文を受ける場面で、取引態様を明示する必要があります。「売主」なら自ら売買の当事者となる立場、「代理」なら本人の代理人となる立場、「媒介」なら契約成立を取り持つ立場を示します。消費者が誰と契約するのかを知るための区分です。
試験で「Aが仲介した」とあれば、特別な代理権等の事情を勝手に補わず、媒介の場面として読み始めます。反対に、代理人として契約を締結したと明示されていれば、権限と効果の帰属を検討します。取引態様を丸暗記するだけでなく、S・A・Bのどこへ契約の効果が生じるかを確認しましょう。
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出典・参照資料
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28
- 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(2026年4月1日施行版)(国土交通省)確認日 2026/10/28
- 民法(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28
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