LELavaEstate
論点権利関係民法(論文式・準備)

相殺の要件|自働債権・受働債権と、相殺できない債権

互いに金銭を請求できても、どの債権でも自由に相殺できるわけではありません。誰が相殺を主張するかを先に決め、弁済期、債権の性質、法律上の禁止を確認します。

相殺の向きと条件について自働債権・受働債権・対当額の関係を整理した図
この記事の目次 7項目
  1. 相殺する人の側から二つの債権に名前を付ける
  2. 同種の債務と弁済期が基本
  3. 100万円と60万円なら残額は40万円
  4. 不法行為による損害賠償債務の制限
  5. 特約や差押えがある場合も別に確認する
  6. 出典・参照資料
  7. 関連記事

相殺する人の側から二つの債権に名前を付ける

AがBに100万円を請求でき、BもAに60万円を請求できる場合、相殺が認められれば対当額で消滅させることができます。Aが相殺を主張するとき、AのBに対する100万円が自働債権、BのAに対する60万円が受働債権です。

Bが相殺を主張するなら、呼び方は逆になります。自働・受働は債権に固定された名前ではなく、誰が相殺するかにより決まります。まず矢印と金額を書いてから名称を付けると混乱を防げます。

同種の債務と弁済期が基本

民法505条1項は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負い、双方の債務が弁済期にあるとき、原則として相殺できるとしています。ただし、債務の性質が許さない場合は相殺できません。

自働債権がまだ期限前で、相手に請求できない状態なのに、当然に相殺へ使えるとはいえません。他方、受働債権の期限の利益を自ら放棄して相殺する場面は、相手方の利益を害さないかなども踏まえて別に検討します。

100万円と60万円なら残額は40万円

両方が相殺できる状態でAが60万円の限度で相殺すれば、Aの債権は40万円残ります。相殺の意思表示が必要であり、互いに債権を持っているだけで自動的に帳消しになるわけではありません。

また、506条は相殺の意思表示に条件又は期限を付けられないとしています。「相場が上がったら相殺する」といった不確定な形を、通常の相殺の意思表示として扱わないようにします。

確認事項

判断する内容

当事者

互いに対立する債権・債務か

目的

金銭同士など同種か

弁済期

自働債権を行使できる時期か等

性質・禁止

相殺が許されない債権か

意思表示

相手に相殺する意思を示したか

不法行為による損害賠償債務の制限

509条は、悪意による不法行為と、人の生命又は身体の侵害による損害賠償債務について、債務者からの相殺による対抗を制限しています。被害者に現実の支払を受けさせる趣旨を考えると、相殺する向きが重要だと分かります。

例えば加害者Aが被害者Bへ治療費等を賠償する場面で、Aが別の貸金を持ち出して相殺を主張する場合です。これを、被害者側からする相殺と同じ扱いにしないでください。条文には債権譲受けについてのただし書もあるため、取得経緯も確認します。

特約や差押えがある場合も別に確認する

相殺を禁止・制限する当事者の意思表示、差押え、債権譲渡などがある場合は、その規律を追加して検討します。「双方が金銭債権を持つ」ことだけでは結論が出ません。

問題文では自働債権の発生原因と取得時期、受働債権の保護の必要性を整理します。債権譲渡と損害賠償の範囲を読めば、何を相殺しようとしているかを具体的に把握できます。

この内容を問題で確かめる

この記事に関連する問題を1問収録しています。まずは1問で、読んだ内容を思い出せるか確かめましょう。

過去問は出題当時の基準、オリジナル問題は記載された基準で採点します。年度・基準日を確認してください。

採点後は各選択肢の理由を確認できます。間違えたところは、この記事に戻って読み直しましょう。

学習記録の保存にはログインが必要です。ログイン後、この演習に戻ります。

出典・参照資料

  1. 民法(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28

関連記事

条文

民法第505条|相殺の要件の条文構造

相殺は互いに同種の債務を負う当事者が対当額で債務を消滅させる仕組みです。自働債権と受働債権、弁済期、相殺禁止の規定や特約を確認します。

解説を読んで疑問が残ったときは、この記事に紐づけて質問できます。

この記事について質問する →

この記事の目次