判例の要点
抵当権の物上代位と賃料の判例|事案・判断・射程
事案
抵当権設定登記後、建物所有者が賃料債権を他社へ譲渡し、借主が確定日付のある証書で承諾した。その後、抵当権者が賃料債権を差し押さえ、借主に支払を求めた。
争点
対抗要件を備えた債権譲渡の後でも、抵当権者は賃料債権を差し押さえて物上代位できるか。
結論
物上代位できるとし、本件では月200万円の9か月分、1800万円の請求を認める結論とした。原判決を一部破棄し、その余の上告は棄却した。
理由
民法304条の払渡し・引渡しには債権譲渡は含まれない。差押えは主に第三債務者を二重弁済の危険から保護する要件とした。
判例法理
学習用要旨:物上代位できるとし、本件では月200万円の9か月分、1800万円の請求を認める結論とした。原判決を一部破棄し、その余の上告は棄却した。
試験での確認点
扱えません。譲渡後も物上代位できる一方、送達前の弁済による債権消滅は抵当権者に主張できると説明されています。
賃料債権の譲渡と、抵当権による物上代位の差押えが競合した事件です。債権譲渡の対抗要件が先でも物上代位が当然にできなくなるわけではなく、差押え前の弁済とは区別して読みます。
登記・譲渡・差押命令の送達を並べる
抵当権設定登記は平成2年、賃料債権の譲渡と確定日付ある承諾は平成5年4月、物上代位による差押命令の借主への送達は同年6月です。債権譲渡が差押えより先だったことだけで抵当権者の権利が消えるかが争われました。
原審は譲渡を財産からの払渡し等と捉えましたが、最高裁はその解釈を改めました。抵当権の公示や、差押え前の譲渡だけで物上代位を容易に回避できる不都合も挙げています。
債権を譲ることと弁済を受けること
民法372条が準用する304条1項は、払渡し又は引渡し前の差押えを求めます。判決は、債権を譲渡することをこの払渡し・引渡しへ含めませんでした。譲渡された後も目的債権を自ら差し押さえて物上代位できます。
一方、第三債務者である借主が差押命令の送達前に譲受人へ弁済した債権については、その消滅を抵当権者へ主張できると説明されています。譲渡だけと、現実の弁済を混同してはいけません。
物上代位には差押えがなお必要
この判決は、抵当権者が何の手続もせず借主から自由に回収できるという意味ではありません。自ら目的債権を差し押さえる必要があります。送達の時点、対象債権、既払いの範囲を確認することが、第三債務者の二重弁済を避ける判断につながります。
また、抵当権設定登記が先にある本件から、どのような登記・譲渡の順序でも常に抵当権者が優先すると一般化しないようにします。現行法では372条・304条を入口に、競合する権利の種類と時系列を確認します。
確認問題
賃料債権の譲渡が先に対抗要件を備えたことと、借主が差押命令送達前に弁済したことは、同じように扱えますか。
解説:扱えません。譲渡後も物上代位できる一方、送達前の弁済による債権消滅は抵当権者に主張できると説明されています。
関連する条文・解説
出典・参照資料
- 最高裁判所第二小法廷 1998-01-30判決(裁判所)確認日 2026/10/25
- 判決全文(裁判所)確認日 2026/10/25
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