判例の要点
持分権確認並びに共有物分割
事案
構造上一体で現物分割できない土地建物につき、居住し隣接建物で薬局を営む共有者Gが取得を希望した。原審はGの単独所有と金銭清算を命じたが、支払能力を確定していなかった。
争点
全面的価格賠償による共有物分割は許されるか。また、本件でその条件を満たすといえるか。
結論
適正評価・支払能力・実質的公平等の条件の下で全面的価格賠償を認めたが、本件は支払能力を確定していないため、共有物分割請求部分を破棄差戻しとした。
理由
共有物の性質、利用、持分、希望等を総合し公平な分割を実現する。取得者が代償金を支払えなければ他の共有者の利益が守られない。
判例法理
学習用要旨:適正評価・支払能力・実質的公平等の条件の下で全面的価格賠償を認めたが、本件は支払能力を確定していないため、共有物分割請求部分を破棄差戻しとした。
試験での確認点
本判決では認められません。取得の相当性に加え、適正評価、支払能力、実質的公平等を確認します。
共有物分割では、物を分ける方法や競売だけでなく、一部の共有者が取得して持分の価格を支払う方法も認められます。本判決はその条件を示す一方、支払能力を確認しなかった原審の判断を差し戻しました。
建物を残す必要と、清算を受ける利益
土地の上に一体の建物があり、持分に応じた区分所有にもできないため、現物分割は不可能とされました。Gには生活の本拠である一方、ほかの共有者は別に居住し、競売による分割を希望していました。Gが取得し、他の共有者が金銭を受け取る案には合理性があります。
最高裁も、Gに取得させること自体が相当でないとはいえないとしました。ただし、居住しているという事情だけでその方法を最終的に認めたわけではありません。
適正な評価と現実の支払能力が必要
全面的価格賠償が許されるには、特定の共有者に取得させるのが相当であること、価格が適正に評価されること、取得者に支払能力があること、共有者間の実質的公平を害しないことなどが必要とされました。
本件でほかの共有者が受け取る持分価格は合計550万円余でしたが、Gにその支払能力がある事実を原審は確定していません。代償金を命じただけでは公平を確保できないため、さらに審理することになりました。
現行258条との関係
判決当時の条文には全面的価格賠償の明示がなく、その解釈が問題でした。2023年4月施行の改正後の民法258条は、一部の共有者が他の共有者の持分を取得して債務を負担する方法を明示しています。現在も条文の列挙と、実際に公平な分割になるかの判断を両方確認します。
持分価格を計算できることと、その金額を現実に支払えることは別です。不動産の適正な評価と資金の裏付けを混同しない点は、宅建の権利関係だけでなく鑑定評価の学習にもつながります。
確認問題
取得を希望する共有者がその建物に住んでいれば、支払能力を調べずに全面的価格賠償で分割できますか。
解説:本判決では認められません。取得の相当性に加え、適正評価、支払能力、実質的公平等を確認します。
関連する条文・解説
出典・参照資料
- 最高裁判所第一小法廷 1996-10-31 持分権確認並びに共有物分割(最高裁判所)確認日 2026/10/28
- 裁判例結果詳細 平成3年(オ)第1380号(最高裁判所)確認日 2026/10/28
- 民法(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28
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