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滞納処分の差押え後の借主にも建物引渡猶予を認めた判例

滞納処分の差押え後の借主にも、競売開始前から賃借権に基づき使用する場合に民法395条の引渡猶予を認めた判例です。

競売と建物引渡猶予を、借主・競売買受人・建物の関係で示す図
この記事の目次 16項目
  1. 判例の要点
  2. 事案
  3. 争点
  4. 結論
  5. 理由
  6. 判例法理
  7. 試験での確認点
  8. どの時点から住んでいたかが争点
  9. 建物引渡猶予の制度を確認する
  10. 滞納処分を競売の開始に含めなかった理由
  11. 決定の結論と射程
  12. 学習用の時系列例
  13. 確認問題
  14. 関連する学習
  15. 出典・参照資料
  16. 次に学ぶ

判例の要点

裁判所
最高裁判所第三小法廷
裁判年月日
2018-04-17
事件番号
平成30年(許)第3号
裁判形式
決定

不動産引渡命令に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件

事案

滞納処分の差押え後、担保不動産競売の開始前に使用を始めた借主に対し、買受人が引渡命令を求めた。

争点

滞納処分の差押え後の借主も、民法395条1項1号の対象となるか。

結論

担保不動産競売の開始前から賃借権により使用する者は、先行する滞納処分の差押え後でも同号に該当する。

理由

滞納処分手続と民事執行法上の競売手続を同視できず、条文上の競売開始に滞納処分の差押えは含まれない。

判例法理

学習用要旨:担保不動産競売の開始前から賃借権により使用する者は、先行する滞納処分の差押え後でも同号に該当する。

公式資料で確認する

試験での確認点

賃借権の存続と、買受け後6か月の引渡義務の猶予を区別する。

建物について滞納処分の差押えがされた後に借り始めた者でも、担保不動産競売の開始前から賃借権に基づいて使用していれば、民法395条1項1号の対象となると最高裁は判断しました。税の滞納処分と、民事執行法上の競売手続の開始を同じ時点として扱わなかった判例です。

どの時点から住んでいたかが争点

最高裁平成30年4月17日第三小法廷決定は、競売で建物を取得した者が引渡命令を求めた場面を扱います。建物には抵当権者へ対抗できない賃借権が設定されていました。借主が使用を始めたのは、滞納処分による差押えの後でしたが、担保不動産競売の開始前でした。

争点は、その借主が民法395条1項1号の「競売手続の開始前から使用又は収益をする者」に含まれるかどうかです。判決を読む際は、二種類の手続を一つの「差押え」という言葉でまとめないことが大切です。

建物引渡猶予の制度を確認する

抵当権者に対抗できない賃借権は、担保不動産競売による売却で効力を失い、建物の使用者は買受人へ引き渡す義務を負います。それでも、住居や営業場所を直ちに引き渡すことによる不利益を緩和するため、一定の使用者には買受けの時から6か月の引渡猶予が認められます。

この制度は、賃貸借がそのまま存続して買受人へ対抗できるという制度ではありません。賃借権の効力と、引渡義務の履行時期を分けて考えます。

時点・行為

本件での位置付け

滞納処分による差押え

借主の賃借権設定より先だった

賃借権に基づく使用開始

担保不動産競売の開始前だった

競売による買受け

引渡猶予の期間の起算に関わる

滞納処分を競売の開始に含めなかった理由

最高裁は、滞納処分手続を民事執行法に基づく競売手続と同視できないとしました。条文が「競売手続の開始」としていることからも、そこに滞納処分の差押えまで含めることはできないと説明しています。

引渡猶予は、占有者の不利益を緩和しつつ、買受人との利害を調整する制度です。その対象を判断するときには、明確な要件を用いる必要があります。先行する別の行政上の手続があったからというだけで、条文上の基準時を繰り上げることはしませんでした。

決定の結論と射程

最高裁は、借主を民法395条1項1号に該当するとした原審の判断を是認し、買受人側の抗告を棄却しました。単に「差押え後の借主は保護されない」と判断するのではなく、その差押えが何の手続によるものかを確認する必要があります。

一方、競売開始後に使用を始めた者まで、この決定で同じ扱いになるわけではありません。また、猶予中の使用の対価の支払など、同条の別の要件も無視できません。6か月間は何の負担もなく使い続けられるという制度でもないため、期間と義務を分けて整理します。

学習用の時系列例

仮に、1月に滞納処分の差押え、3月に賃貸借に基づく使用開始、6月に担保不動産競売の開始があったとします。この事例では、3月は1月より後でも、6月より前です。本決定の判断対象はこの前後関係であり、1月を競売の開始と読み替えないことが要点です。月は説明用の仮定で、本件の実際の日付ではありません。

確認問題

民法395条の引渡猶予が認められれば、その借主は従来の賃貸借を競売買受人に対抗して更新し続けられるでしょうか。

答えは、そうではありません。引渡猶予は、賃借権を存続させる仕組みではなく、買受け後の引渡義務の履行を一定期間猶予する仕組みです。

関連する学習

取得時効と登記でも第三者の登場時点を区別します。建物の仮差押えと法定地上権と比較し、宅建士の学習入口から物権分野へ戻れます。

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出典・参照資料

  1. 最高裁判所第三小法廷 2018-04-17 不動産引渡命令に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件(最高裁判所)確認日 2026/10/23
  2. 裁判例結果詳細 平成30年(許)第3号(最高裁判所)確認日 2026/10/23

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