計算の要点
計算式
事例単価×事情補正率×時点修正率×地域要因比較率×個別的要因比較率×対象面積
計算の条件
- 事例単価(万円/㎡)
- 対象面積(㎡)
計算手順
- 適切な事例と単価の範囲を確認
- 事情補正・時点修正
- 地域要因・個別的要因を比較
- 単価から総額を求め、複数事例を比較考量
具体例
- 面積㎡: 200
- 事情補正: 100/80
- 個別比較: 120/100
- 地域比較: 100/110
- 時点修正: 110/100
- 事例単価万円: 20
答え
6,000万円(補正後単価30万円/㎡)
集めた取引価格の平均ではない
取引事例比較法は、適切な取引事例を選び、その価格を対象不動産と比較できる条件に直して、比準価格を試算する方法です。取引事情が正常か、正常な状態へ補正できるか、時点修正や要因比較が可能かを調べます。多く集めた事例を無条件に同じ重みで平均する手法ではありません。
例えば、売り急ぎによって安くなった取引、価格時点より前の取引、駅に近い別地域の取引がある場合、それぞれ価格に含まれる条件が違います。この違いを調べずに対象地へそのまま当てはめると、対象地の条件を表す価格にはなりません。補正は数字を整える作業である前に、事例を理解する作業です。
事情補正と時点修正は、何を直すかが違う
事情補正は、特殊な取引事情が価格に及ぼした影響を正常な状態へ直すものです。正常な価格を100とすると、売り急ぎにより80で取引されたという条件なら、実際の取引価格に100/80を掛けます。「20%安い」を戻すために単に1.20倍するのではなく、80を100へ引き上げる関係を使います。
時点修正は、取引時点から価格時点までの価格水準の変化をそろえるものです。その間に水準が100から110へ上がったなら110/100を掛けます。修正の対象は時間の違いです。周辺地域の優劣や土地の形状の違いは、時点修正とは別に検討します。
要因比較は、分子と分母の意味を読む
事例の地域条件が110、対象の地域条件が100なら、事例を対象の地域へ直す比較率は100/110です。事例の方が優れているので、同じ対象条件へ直した単価は下がる方向になります。対象の個別条件が120、事例の個別条件が100なら、その比較率は120/100で、対象の方が優れる分だけ上がる方向です。
ただし設問によって、指数が何を100としているかの表現は異なります。数字の並びだけを覚えると逆数を使いやすくなります。「事例の110を対象の100へ直す」と言葉にしてから分数を書き、結果が上がるべきか下がるべきかを確認してください。
例題:四つの違いを直して総額を求める
事例単価20万円/㎡、事情補正100/80、時点修正110/100、地域要因比較100/110、個別的要因比較120/100とします。対象面積は200㎡です。これらの指数は問題で与えられたものとし、追加の補正はないとします。
事情補正後は20×100/80=25万円/㎡、時点修正後は25×110/100=27.5万円/㎡です。地域条件を直すと27.5×100/110=25万円/㎡、個別条件を直すと25×120/100=30万円/㎡になります。対象総額は30万円/㎡×200㎡=6,000万円です。
ここでは時点修正と地域要因比較の数値が結果的に相殺しますが、意味が同じだから省略できるわけではありません。途中式には各調整の役割を残すと、どの条件を処理したか確認しやすくなります。単価の計算が終わってから対象面積を掛けることで、単価と総額の混同も防げます。
単価の分母を、面積とともに確認する
事例総額3,300万円、事例面積150㎡なら、事例単価は3,300÷150=22万円/㎡です。対象面積が200㎡であっても、事例単価を求める段階では事例面積で割ります。条件の補正・比較を終えて対象相当単価を求めた後に、対象面積200㎡を掛けます。事例面積と対象面積を入れ替えると、条件比較以前に単価が誤ります。
金額の範囲も同じくらい重要です。土地建物一括の価格を、土地だけの取引単価として無条件に割ることはできません。建物等を含む取引から土地部分の資料を得る場合には、各構成部分の価格や割合を明確にして検討します。設問が「土地単価」として与えているのか、複合不動産の総額を示しているのかを、数字の単位と一緒に読みます。
比較の向きと、事例の信頼性を見直す
別の確認問題として、事例単価110、事例条件110、対象条件100で他の補正がなければ、対象相当単価は110×100/110=100です。121という答えは、既に優れた条件を含む事例へ、さらに110/100を掛けた逆向きの計算です。
複数の事例から異なる価格が出た場合は、差が生じた理由、資料の信頼性、補正や比較の確かさを検討します。近い時期の成約であっても、特殊事情を十分に把握できない事例には注意が必要です。計算が正しいことと、比較資料として適切なことは、両方を確認する必要があります。
取引事例比較法の確認
取引事例比較法では、適切な取引事例を選び、事情補正・時点修正・地域要因や個別的要因の比較などを行って比準価格を試算します。取引価格をそのまま平均する方法ではありません。補正率の分子と分母、事例から対象へ直す向きを確認します。
間違えやすい点
事例が対象より優れている場合、対象に合わせる補正の向きを逆にしないでください。提示された指数がどちらを100としているかも読みます。
例で確かめる
事情・時点等の調整後の事例単価が110、事例の個別条件が対象100に対して110なら、対象相当は110×100÷110=100です。
基礎確認用の補足教材。確認問題に用いる基準は各問題に表示しています。
- 不動産鑑定評価基準・運用上の留意事項:総論第7章第1節 取引事例比較法
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出典・参照資料
- 不動産鑑定評価基準(国土交通省)確認日 2026/10/22
- 不動産鑑定評価基準運用上の留意事項(国土交通省)確認日 2026/10/22
- 不動産鑑定評価基準(平成26年5月1日一部改正)(国土交通省)確認日 2026/10/27
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