安い取引を見つけたら、まず理由を調べる
取引事例比較法では、実際に成立した取引価格を重要な資料とします。ただし、特殊な事情が価格へ影響した場合、そのまま正常な事情の価格として採用できるとは限りません。売り急ぎ等の事情が存在し、どれだけ影響したかを検討します。
売主が売却を望んでいたという通常の動機を、すべて特殊事情と扱うわけではありません。また、価格が周辺より低いことだけで売り急ぎと断定するのも不十分です。接道、建物の状態、面積、取引時点、権利関係等による差ではないかを先に確かめます。
事情・時点・個別条件を一つの補正率に混ぜない
事情補正が扱うのは、その取引固有の特殊な事情による価格への影響です。取引時点から価格時点までの市場の変化は時点修正、地域や個別の不動産条件の違いはそれぞれの比較として整理します。
違いの例 | 主に検討する作業 |
|---|---|
特殊な売り急ぎによる減価 | 事情補正 |
半年前から市場水準が変化 | 時点修正 |
事例地と対象地の接道条件が違う | 個別的要因等の比較 |
取引内容や価格の内訳を確認できない | 事例の採用可能性・信頼性の検討 |
同じ理由を二つの段階で重複して補正すると、影響を二重に計上してしまいます。どの率が何を直すのかを短く記してから計算すると、補正の目的を見失いにくくなります。
正常な価格の90%で取引された例
特殊な事情によって、事例の取引価格が正常な事情の価格の90%となり、実際の取引価格が1,800万円だったと仮定します。正常な事情の価格をXとすると、0.9X=1,800です。したがってX=1,800÷0.9=2,000万円になります。
1,800万円に10%を足して1,980万円とする計算では、正常な価格の10%と取引価格の10%を混同しています。補正率の分母・分子を確認し、どの額を100とした比率なのかを明らかにしてください。この例の90%は学習用の仮定で、売り急ぎに一律の率が決まっているわけではありません。
補正後の数字も検算する
上の例なら、補正後の2,000万円に90%を掛けると1,800万円へ戻ります。通常より安く取引されたという仮定なのに、正常化後の価格まで安くなる計算になっていないかも確認します。式を覚えるだけでなく、補正の方向と逆算の両方を見る方法です。
反対に、特殊な事情で通常より高い価格になっていた場合には、正常化の方向も異なります。すべての事情補正で価格を引き上げるわけではありません。与えられた事実と率の定義から、何を取り除くのかを判断します。
事情が分からない事例を、無理に使わない
事情補正は、資料不足を埋めるために任意の率を当てはめる作業ではありません。取引事情が正常と認められるか、又は正常なものに補正できること等、事例選択の条件を確認します。影響を合理的に判断できない場合、資料の信頼性や採用の可否を検討する必要があります。
実務での説明も、「安かったので10%上げた」だけでは不足します。事実の確認方法、率の根拠、他の条件差との分離を示します。試験では、正常な価格を基準にする比率か、取引価格に掛ける補正率かを先に読み分けましょう。
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出典・参照資料
- 不動産鑑定評価基準(国土交通省)確認日 2026/10/28
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