相手方の善意だけで、取消権は消えない
未成年者や被保佐人等との契約では、相手方がその事情を知らなかったとしても、直ちに取消しができなくなるわけではありません。保護制度が予定する取消しと、取引相手の善意は別の問題です。
民法21条は、制限行為能力者が、行為能力者であると信じさせるため詐術を用いたとき、行為を取り消せないとしています。問題となるのは、本人が相手方の誤信を生じさせるために何をしたかです。
年齢についての具体的な働きかけを確認する
17歳のAが、成年者であるように生年月日を改変した書類を示して契約した例では、相手方を信じさせるための行為が具体的にあります。一方、見た目が大人に見えた、相手が年齢を確認しなかったというだけでは、A自身の詐術を示したことにはなりません。
「年齢を言わなかった」という一事だけで、常に詐術になるとも、常に詐術にならないとも決めません。沈黙がほかの言動と結びついて、相手方の誤信を生じさせ、又は強めたと評価できるかを、事実から検討します。
同意があると偽った場合も考える
法定代理人の同意が必要な契約について、本人が同意を得ているかのように装う行為も問題になります。例えば、親権者の承諾書を偽造して提出した場面です。単に「相手が同意済みだと思った」というだけでなく、本人がどのように信じさせたかを確認します。
同意が本当にあった場合には、そもそも同意を欠くことを理由とする取消しの問題になりません。本物の同意、同意についての相手方の思い込み、同意があると信じさせる詐術を、三つに分けます。
事実 | 検討の出発点 |
|---|---|
相手方が未成年と知らなかった | その事実だけで取消しを否定しない |
本人が成年と装う資料を示した | 誤信させるための詐術を検討 |
本人が年齢を告げなかった | ほかの言動と合わせ、具体的に検討 |
本人が承諾書を偽造した | 同意があると信じさせる行為を検討 |
取消しができない理由の範囲
21条によって制限されるのは、制限行為能力を理由とする取消しです。契約に別の無効原因や取消原因がある場合まで、すべての主張が失われるという規定ではありません。どの根拠に基づく取消しを問題にしているかを確かめます。
また、本人が詐術を用いた場合に、法定代理人なら同じ制限行為能力を理由に取り消せると考えるのも適切ではありません。誰が取消権を行使するかだけを変えて、21条の効果を回避できる制度ではありません。
問題文では「行為」と「認識」を対応させる
本人の発言や提示資料、その目的、相手方がそれを見聞きした結果を並べます。相手方が信じた理由を本人の詐術に結びつけて説明できるかがポイントです。結論だけを覚えるより、どの事実が足りなければ判断できないかを考えると理解が深まります。
出典・参照資料
- 民法(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28
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