不能かどうかは、契約内容と社会通念から判断する
民法412条の2は、契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして履行が不能であるとき、履行請求はできないと定めています。物理的に絶対不可能かだけではなく、約束の内容からその履行ができるかを考えます。
例えば特定の建物を引き渡す契約で、その建物が全焼した場合、同じ建物の引渡しはできません。ほかの建物を建てればよいという話と、もとの債務を履行できるかという話を混同しないようにします。
不可能な履行を請求できないことと、責任がないことは別
履行不能であれば、債権者はその履行を請求できません。しかし、債務者が建物を故意に壊した場合まで、不能だから責任がないとはなりません。損害賠償については415条を確認します。
同条では、不履行が契約等と取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由による場合、損害賠償責任を負わないとされています。不能という結果だけでなく、その原因と契約で引き受けたリスクの内容が重要です。
解除には、債務者の帰責事由を必須としない
全部の履行が不能であるときは、542条により催告なしの解除を検討します。現行法では、解除のために債務者の帰責事由が常に必要という構造ではありません。損害賠償の条件を、そのまま解除へ移さないでください。
ただし、債務不履行が債権者の責めに帰すべき事由による場合には、543条により解除が制限されます。債務者の責任が不要ということと、債権者自身が原因を作っていても自由に解除できるということは違います。
求めるもの | 主な検討事項 |
|---|---|
約束どおりの履行 | 412条の2。不能なら請求できない |
契約の解除 | 542条等の解除原因と543条の制限 |
損害賠償 | 415条の要件と帰責事由 |
反対給付の支払拒絶 | 536条等の危険負担を別に確認 |
契約成立時から不能だった場合
契約の成立時にすでに履行不能だったというだけで、損害賠償が当然に排除されるわけではありません。412条の2第2項は、成立時の不能が415条による損害賠償請求を妨げないとしています。
例えば売主が契約前の建物滅失を知りながら、現存する建物の引渡しを約束した場合です。成立時の不能を確認しただけで契約の検討を終わらせず、契約内容、当事者の認識、損害との関係を確かめます。
一部だけ不能な場合にも注意する
全部不能と一部不能は区別します。履行できる残りの部分だけでは契約目的を達成できない場合などには、全部の解除が問題になりますが、一部不能ならどの事例でも契約全体を直ちに解除できるというわけではありません。
問題文を「できなくなった給付」「原因を作った人」「相手が求める救済」の三つに分けます。危険負担と解除の原状回復を合わせると、代金と返還の判断までつながります。
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出典・参照資料
- 民法(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28
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