何月何日の価値を判断するのかを決める
価格形成要因は変動します。金利、地域の需給、法規制、建物の状態などが変わるため、不動産の価値を示すには基準日が必要です。同じ物件でも、いつの価値かが示されなければ、別の取引や評価結果と適切に比較できません。この基準となる日が価格時点です。
価格時点は、評価額を計算し終えた日という意味ではありません。依頼目的等に応じて基本的事項として確定し、その日における要因の状態と市場の見通しに対応させて分析します。評価作業の都合で、後から任意の日へ変えてよいものではありません。
現地調査日と同じである必要はない
4月1日の価値を求めるため、3月20日に現地調査し、4月15日に報告書を提出する例を考えます。価格時点、実地調査日、報告書提出日は、それぞれ異なる役割の日付です。調査日が先行しているから、4月1日を価格時点にできないということにはなりません。
ただし、調査後に建物が損傷した、契約が解約されたなど、価格時点までに状態が変わっていれば、その情報を反映する必要があります。日付が別でもよいことは、両日の状態の違いを無視してよいという意味ではありません。資料と現地情報が、どの時点の状態を示すかを確かめます。
取引時点の違いは、時点修正で検討する
比較に用いる事例が前年の取引なら、価格時点までに市場の価格水準がどう変わったかを検討します。取引価格を単に現在の数字として並べるのでなく、時期の違いを調整する必要性と根拠を判断します。これが取引事例比較法における時点修正に関わります。
例えば価格指数が取引時点100、価格時点104という設問で、他の条件が同じなら、事例価格1,000万円を1,000×104÷100=1,040万円へ直す例が考えられます。指数の方向を逆にせず、どの時点からどの時点へそろえるのかを書いてから計算します。現実の修正率は、与えられた数字を無条件に適用するものではありません。
価格時点の予測と、後から判明した結果を分ける
4月1日の時点で公表されていた交通計画が市場の期待に影響していたなら、その見通しを検討します。一方、6月になって初めて明らかになった情報を、4月の市場参加者も当然に知っていたものとして扱うと、判断の基準がずれます。後の資料は、4月当時の状態を確かめる材料なのか、後に生じた変化なのかを分けます。
将来予測を考慮するという予測の原則と、価格時点の確定は矛盾しません。ある基準日において将来をどう見込んでいたかを判断するからこそ、基準日が必要です。「価格は変わるので、価格時点を定めなくてよい」は、この関係を逆にした記述です。
期間の数字と、基準日を混同しない
収益資料には、一年間の収入や過去数年間の費用が示されることがあります。その対象期間と価格時点は同じ概念ではありません。前年の実績を使って価格時点の収益力を判断するなら、契約、稼働、修繕等に生じた変化を確かめ、どの水準を採用するか説明します。
設問の余白に、価格時点、調査日、資料の対象期間、報告日を分けて書くと、情報の混同を防げます。特に過去時点の評価では、現在の便利さや現在の建物状態を、そのまま昔の価値へ移さないことが重要です。
一つの時系列を図ではなく文章で追う
前年12月に取引事例が成立し、今年3月に対象を調査し、4月1日を価格時点として5月に報告したとします。12月の取引価格は4月の市場水準と対応させ、3月の調査結果は4月の対象の状態と対応させます。5月に完成した報告書であっても、5月の価格を答えたことにはなりません。
4月中旬に借主から解約通知が来た場合、それが4月1日に既に存在した事情を示す情報なのか、4月1日後に新たに生じた事情なのかを検討します。日付が後だから一律に排除する、あるいは評価作業中に知ったからすべて採用するという両極端を避けます。
時系列の整理は、数字の期間をそろえる作業にもつながります。年間収支の対象期間、賃料の適用期間、価格指数の時点を分けて書くことで、誤った情報を正しい計算式に入れるミスを見つけやすくなります。
基本的事項・条件の確定の確認
基本的事項は、対象不動産、価格時点、価格又は賃料の種類を確定する部分です。価格時点は、どの時点の経済価値を求めるかを示します。現地調査日、依頼日、報告書の発行日とは必ずしも一致しません。条件を付す場合は、その合理性なども確認します。
間違えやすい点
価格時点を現地に行った日で自動的に決めないでください。価格形成要因の分析や資料の補正も、その時点と整合させます。
例で確かめる
4月に現地調査し、3月末時点の価格を評価する依頼では、調査日と価格時点を区別して資料を検討します。
基礎確認用の補足教材。確認問題に用いる基準は各問題に表示しています。
- 不動産鑑定評価基準・運用上の留意事項:総論第5章
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出典・参照資料
- 不動産鑑定評価基準(平成26年5月1日一部改正)(国土交通省)確認日 2026/10/23
- 不動産鑑定評価基準運用上の留意事項(国土交通省)確認日 2026/10/23
- 不動産鑑定評価基準(平成26年5月1日一部改正)(国土交通省)確認日 2026/10/28
- 不動産鑑定評価基準運用上の留意事項(平成26年5月1日一部改正)(国土交通省)確認日 2026/10/28
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