依頼者の味方であることと、希望額に合わせることは違う
不動産鑑定士には、良心に従い誠実に鑑定評価等業務を行い、専門家として公正な判断をすることが求められます。依頼者が「融資に使うので高くしてほしい」と希望しても、その希望自体を価格決定の根拠にはできません。
依頼目的を理解することは必要です。しかし、求める価格の種類や評価条件を適切に設定することと、結論を先に固定して都合のよい資料だけを採用することは異なります。目的、前提、根拠資料、判断の順序を守ります。
不利な資料も、判断への関係から扱う
例えば収益物件の空室や修繕負担について、依頼者が資料を評価書から外すよう求めた場合です。単に依頼者が望まない情報だから省くのではなく、対象の価格形成にどう関係するか、資料の信頼性はどうかを検討します。
一方、得た資料を無条件にすべて公開するのが公正という意味でもありません。判断に必要な情報を適切に扱い、評価書の説明と秘密保持の両方を満たす方法を考えます。
鑑定士個人と鑑定業者の秘密保持
法律6条は、鑑定士が正当な理由なく鑑定評価等業務で知り得た秘密を漏らすことを禁じています。鑑定士でなくなった後も同様です。38条は鑑定業者の秘密保持を定め、廃業後も義務が続きます。
したがって、退職、資格登録の消除、会社の廃業を理由に、過去の依頼内容を自由に話してよいとはいえません。誰がどの立場で知った情報か、正当な理由があるかを確認します。
共有する場面 | 確認すること |
|---|---|
評価チーム内の共有 | 業務上必要な人と必要な範囲か |
外部専門家への相談 | 依頼範囲、必要性、守秘の取決め等 |
事例・研修での利用 | 当事者や物件が推測される情報が残らないか |
退職・廃業後の問い合わせ | 義務が続くことを前提に対応 |
名前を消しただけで十分とは限らない
物件名を伏せても、所在地、規模、特殊な設備、取引時期を組み合わせると、依頼者や対象が分かることがあります。研修資料を作るときは、氏名だけを削れば安全とせず、情報の組合せから特定されないかを確認します。
また、公開資料に含まれる情報と、依頼業務の中だけで得た条件・交渉内容は区別します。登記情報が公開されているからといって、依頼の事実や内部資料まで当然に公開情報になるわけではありません。
判断の記録を残す
資料採否、評価条件、依頼者からの要望とその対応を記録すれば、なぜその判断に至ったかを説明できます。結論の変更を求められたときも、新しい根拠に基づく見直しか、希望への迎合かを分けられます。
公正・誠実義務と秘密保持は、評価の品質と依頼者の信頼を支える別々の義務です。鑑定士への懲戒と特定価格・特殊価格で、違反や評価目的との関係も確認してください。
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出典・参照資料
- 不動産の鑑定評価に関する法律(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28
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