判例の要点
不当利得返還請求事件
事案
区分所有者が専有部分と塔屋・外壁等を携帯電話基地局用に貸した。別の区分所有者が、共用部分の賃料のうち自分の持分に相当する金額を不当利得として請求した。
争点
共用部分の賃料について生じる不当利得返還請求権を、各区分所有者が個別に行使できるか。
結論
原則は各人の請求権行使を認めるが、本件の管理規約は団体のみの行使を定めた趣旨を含むとして、個人の請求を認めなかった。上告棄却。
理由
共用部分の管理と密接に関連する請求であり、集会の決議や規約により団体だけが行使する仕組みを定められるとした。
判例法理
学習用要旨:原則は各人の請求権行使を認めるが、本件の管理規約は団体のみの行使を定めた趣旨を含むとして、個人の請求を認めなかった。上告棄却。
試験での確認点
違います。請求権の存在・帰属と、規約等に照らして誰が行使するかを分けた判断です。
共用部分の無断賃貸で不当利得が生じても、各区分所有者がいつでも個別に請求できるとは限りません。請求権の帰属と行使を分け、規約や集会決議による団体的な管理の意味を読む判例です。
専有部分の賃料と共用部分の賃料を分ける
契約全体の賃料は月28万2000円で、そのうち塔屋・外壁等の共用部分の対価に相当する部分は月12万2000円とされました。基地局の機器の一部は専有部分、アンテナの支柱等は共用部分に置かれています。請求対象を理解するには、使っていた場所と収益の内訳を分ける必要があります。
本件の規約で認められていた冷却塔や看板等の設置に、基地局の支柱等は当たらないとされました。不当利得が成立するという点と、その請求を個人で行えるかという点が、別に検討されています。
権利があることと個別に行使できること
最高裁は、持分相当額の不当利得返還請求権が各区分所有者に帰属し、原則として各人が行使できると説明しました。そのうえで、集会の決議又は規約で団体のみが行使できるとした場合には、個人の行使は認められないとしました。
本件の規約には、管理者が共用部分を管理し、特定の区分所有者へ無償で使用させることができる定めがありました。最高裁は、この定めが団体のみの請求権行使の趣旨を含むと読みました。規約の実際の内容を抜きに個人の請求を一律に否定したわけではありません。
請求が棄却されても、無断使用が適法とは限らない
個人の請求が認められなかったことから、共用部分を無断で貸して賃料を独占してよいとはいえません。使用の権限、不当利得の有無、請求を行う主体を分けると、結論の理由が明確になります。
2026年4月施行の区分所有法改正後の案件では、現行の規約・集会・管理に関する規定と経過措置も確認します。本判決の当時の手続や規約を、現在のどのマンションにもそのまま当てはめることはできません。
確認問題
個人による請求が棄却されたなら、賃料を得た区分所有者に不当利得はなかったという意味でしょうか。
解説:違います。請求権の存在・帰属と、規約等に照らして誰が行使するかを分けた判断です。
関連する条文・解説
出典・参照資料
- 最高裁判所第二小法廷 2015-09-18 不当利得返還請求事件(最高裁判所)確認日 2026/10/28
- 裁判例結果詳細 平成25年(受)第843号(最高裁判所)確認日 2026/10/28
- 建物の区分所有等に関する法律(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28
解説を読んで疑問が残ったときは、この記事に紐づけて質問できます。
この記事について質問する →