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論点賃貸住宅管理

住宅の一部が使えないとき|家賃の減額・解除・修繕の違い

借主の責任によらず住宅の一部が使えない場合の賃料減額を、使用不能の範囲・期間と解除要件から学びます。

緑の植栽に囲まれた住宅街
この記事の目次 9項目
  1. 一部の使用不能と、借主に責任がないこと
  2. 現在の規定は「請求できる」ではなく減額の効果
  3. 浴室が10日使えなかった例
  4. 残りの部分で目的を達成できなければ解除も問題になる
  5. 修繕費や損害賠償は、別の問いとして扱う
  6. 故障受付から精算まで、日付をつなぐ
  7. 仮定の率を、法定の一覧表にしない
  8. 出典・参照資料
  9. 次に学ぶ

一部の使用不能と、借主に責任がないこと

民法611条1項が扱うのは、賃借物の一部が滅失その他の事由で使用・収益できなくなり、それが借主の責めに帰すべき事由によらない場合です。建物の一部が焼失した場合だけでなく、設備故障等による使用不能も検討の対象になります。

借主が故意・過失で設備を壊した場合に、同じ規定から当然に減額されるとはいえません。また、使いにくいと感じたというだけで直ちに一部使用不能になるとも限りません。設備の状態、契約上予定した使用、実際の支障を確認することが先です。

現在の規定は「請求できる」ではなく減額の効果

要件を満たしたときは、使用できない部分の割合に応じて賃料が減額されます。2020年施行の改正前の「減額を請求できる」という規律と区別してください。借主から請求がない、又は貸主が同意しないというだけで、法律上の減額が起こらない制度ではありません。

ただし、法的に減額が生じることと、具体的な支払額に争いがないことは別です。借主の連絡、貸主の調査、復旧日の記録がなければ、対象となる期間や割合が分からなくなります。借主の通知義務と、減額の発生条件も混同しないようにします。

浴室が10日使えなかった例

月額9万円の住戸で、借主に責任のない配管故障により浴室を10日間使えなかったとします。住宅の他の部分は使えるので、家賃全額がゼロになるとは限りません。一方、浴室の床面積が住戸の何%かを計算すれば必ず結論が出るものでもありません。

浴室を使用できないという機能上の支障、代替手段、使用不能の程度と期間などを整理し、具体的な割合を検討します。仮に当事者が対象期間の減額率10%、1か月30日での日割計算に合意したなら、9万円×10%×10日÷30日=3,000円となります。この10%は説明のための仮定であり、法律が浴室について一律に決めた率ではありません。

残りの部分で目的を達成できなければ解除も問題になる

一部が使えなくなり、残った部分だけでは賃借した目的を達成できないときは、民法611条2項による借主の解除を検討します。単に一部が壊れたことだけで解除できるのではなく、契約の目的を達成できるかが判断の要点です。

これに対し、賃借物の全部が滅失等で使用・収益できなくなった場合には、民法616条の2による賃貸借の終了の規律があります。一部の減額、一部使用不能による解除、全部使用不能による終了を並べて整理すると、効果を取り違えにくくなります。

修繕費や損害賠償は、別の問いとして扱う

賃料減額に貸主の過失が当然に必要なわけではありません。他方、故障により借主の荷物が損傷した場合の損害賠償まで、自動的に同じ結論になるわけでもありません。修繕義務、必要費の償還、損害賠償にはそれぞれ判断すべき条件があります。

管理担当者は、現地の状態と使用不能期間を記録し、応急対応と復旧手配を進めます。割合や責任が未確定である段階でも、使用不能の事実まで曖昧にしないことが、貸主・借主の協議の土台になります。

故障受付から精算まで、日付をつなぐ

浴室が使えないという連絡を受けた場合、連絡日だけでなく、実際に使用できなくなった日と復旧日を確認します。受付日が遅かったから使用不能がその日から始まった、修理を発注したから使用可能になった、とは限りません。

記録する項目

確認する理由

使用不能の開始・内容

期間と機能上の支障を確かめる

原因と借主の帰責性

民法611条の要件を検討する

応急措置・代替手段

使用への影響を具体的に把握する

復旧と動作確認の日

発注日・工事日との違いを確認する

計算の期間・割合・日割りの方法

精算額の根拠を共有する

記録は、貸主に過失があることを証明するためだけのものではありません。賃料減額、修繕義務、損害賠償の判断に必要な事情を、同じ資料からそれぞれ検討できるように残します。

仮定の率を、法定の一覧表にしない

月額9万円、合意した減額率10%、対象10日、1か月30日という前提では3,000円の減額です。対象期間だけ20日に変われば6,000円となります。ただし、期間を延ばすだけで支障の程度や代替手段まで同じとは限らないため、実際には事実関係を再確認します。

民間の目安や過去の合意を参考にする場合でも、個別事情を検討せず法定の率として説明しないでください。金額を計算する前に、対象期間と割合がどの根拠に基づくかを明示することが重要です。

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出典・参照資料

  1. 民法(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28
  2. 民法改正法が令和2年4月1日に施行されました(国土交通省)確認日 2026/10/28

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