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論点賃貸住宅管理

敷金の返還|返す時期・控除できる債務・精算の計算

賃貸借終了と住宅返還がそろった時点で、敷金から未払家賃等の債務を引き、残額を返す仕組みを学びます。

緑の植栽に囲まれた住宅街
この記事の目次 10項目
  1. 「保証金」という名前でも、目的で敷金に当たる
  2. 終了だけでなく、住宅の返還を受けたとき
  3. 控除するのは、借主が負担する金銭債務
  4. 20万円から何を引くか、順に計算する
  5. 借主は「今月の家賃を敷金から」と請求できない
  6. 工事見積額と、敷金から控除する額を分ける
  7. 一部に争いがあるときも、明細を曖昧にしない
  8. 3問で理解を確かめる
  9. 出典・参照資料
  10. 次に学ぶ

「保証金」という名前でも、目的で敷金に当たる

民法622条の2は、金銭の名称だけでなく、何を担保するために交付したかを見ます。賃料や賃貸借に基づく他の金銭債務を担保する目的なら、「保証金」などの名前でも敷金としての規律を検討します。

一方、契約時に支払ったお金がすべて敷金になるわけではありません。礼金、前払い賃料、仲介手数料では、支払先や目的が異なります。精算を始めるときは、入居時にいくら払ったかだけでなく、契約書と入金記録から各金銭の性質を確かめます。

終了だけでなく、住宅の返還を受けたとき

本記事で扱う通常の退去では、賃貸借が終了し、かつ貸主が賃借物の返還を受けたときに、控除後の残額について返還義務が生じます。解約通知を出しただけ、契約の終期が来ただけでは、まだ住宅を占有していることがあります。

「敷金を先に全額返してもらうまでは明け渡さない」と当然に主張できるわけではありません。また、法律の返還条件とは別に、契約書に精算・送金の手順や時期の定めがあれば、その内容も確認します。退去立会い、鍵の返却、明渡し、見積りの到着が同じ日とは限りません。

控除するのは、借主が負担する金銭債務

敷金から控除できるかは、実際に借主が負う債務かで判断します。未払家賃、借主の責任による損傷の補修費等が考えられますが、通常損耗や経年変化による費用まで、見積書に載っているという理由だけで一律に控除することはできません。

貸主が退去に合わせて設備をグレードアップした場合、その工事費全体が借主の債務になるわけでもありません。工事の実施額、借主負担となる根拠、補修範囲、特約の有効性を区別し、控除額を説明できるようにします。

20万円から何を引くか、順に計算する

敷金20万円、未払家賃5万円、適法に借主負担となる補修費2万円で、他に債務がない場合、返還額は20万円-5万円-2万円=13万円です。5万円と2万円は控除する額であり、その合計7万円を「返す額」と取り違えないでください。

敷金より債務が多い場合は、敷金があるから借主の責任がそこまでに制限される、というわけではありません。逆に、未払家賃が一部あるだけで敷金全額を没収できるわけでもありません。入金済み敷金、控除項目、控除合計、残額を明細に分けます。

借主は「今月の家賃を敷金から」と請求できない

賃貸借の継続中に借主の債務が支払われないとき、貸主は敷金をその弁済に充てることができます。しかし、借主の側から敷金を債務の弁済に充てるよう請求することはできません。敷金を預けた時点で、毎月の家賃が前払いされたわけではないからです。

管理担当者は、敷金の預り残高と家賃の入金状況を別に管理します。借主から充当の相談があった場合も、借主の請求権があるという説明と、貸主が個別に対応を検討することを混ぜないようにします。

工事見積額と、敷金から控除する額を分ける

退去時の工事見積りが12万円でも、すべて借主が負担する債務と決まったわけではありません。例えば、通常損耗の補修8万円、適法に借主負担となる損傷の補修4万円という仮定なら、見積総額12万円と借主負担額4万円を別の欄に記載します。実際の負担は損傷、補修範囲、経過年数、特約等から判断します。

仮定の精算項目

金額

預かっている敷金

20万円

未払家賃

5万円

借主負担と判断した補修費

4万円

通常損耗として貸主が負担する補修費

8万円。敷金からは引かない

借主へ返還する敷金

20-5-4=11万円

この例で返還額を20-5-12=3万円とすると、貸主負担の工事費まで控除しています。見積り、負担の判断、精算の計算を三段階に分けると、計算ミスだけでなく根拠のない控除にも気付きやすくなります。

一部に争いがあるときも、明細を曖昧にしない

借主が補修費4万円のうち一部を争っているなら、工事箇所、損傷の状態、借主負担と考える理由、写真や入居時記録を対応させます。「退去費用一式」という請求では、何が家賃で何が補修費か、どの部分を争っているかが分かりません。

法律上の返還義務の発生と、個々の控除項目の金額について合意できたかを分けて確認します。管理会社が連絡窓口となる場合にも、貸主の判断権限と契約上の業務範囲を確かめ、根拠の確認前に返還額を確約したり全額没収と説明したりしないようにします。

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出典・参照資料

  1. 民法(e-Gov法令検索)確認日 2026/10/28
  2. 国土交通省:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)確認日 2026/10/28

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